海外赴任が決まってから会社に確認すること|元人事担当者がSTEP別に解説
海外赴任の話が出たとき、「何を確認すればいいんだろう?」と思う人は多いと思います。
元人事担当者の私も海外赴任予定者から色々質問を受けてきました。
でも規則や海外赴任規程を読んでみると、意外と多くのことが書かれていました。
規程を読まずに質問すると、「それ規程に書いてありますよ」と言われてしまったり、本当に聞きたかったことを聞き忘れたりします。
まずは会社のルールを把握する。
そのうえで、自分のケースで分からないことを人事や代行会社へ確認する。
この順番の方が効率的です。
この記事では、実際に海外赴任が決まってから渡航までの流れに沿って、どのタイミングで何を確認すると進めやすいのかを整理してみました。
STEP1|赴任を受ける前に確認したいこと
海外赴任の話が出たら、まず確認したいのが赴任条件です。
この段階では、給与や税金などの細かい制度よりも、
- どこへ行くのか
- どんな仕事をするのか
- 家族は帯同できるのか
といった大枠を把握することが目的です。
ここで得た情報をもとに、自分や家族にとって現実的な選択肢なのかを考えていきます。
Q. 駐在先はどこ?
赴任先によって生活環境は大きく変わります。
- 国だけでなく都市まで決まっている
- 赴任後に勤務地が変更になる可能性がある
- 工場勤務と都市部勤務で生活環境が大きく異なる
同じ国でも都市部と地方では、医療・教育・交通事情が異なることもあります。家族帯同を考えている場合は、住む予定のエリアまで把握しておくとイメージしやすくなります。
Q. 赴任時期はいつ?
赴任時期によって、引越しや子どもの転校準備、住民票や税金の手続きにも影響します。
Q. 駐在期間はどのくらい?

2~3年程度が多そうですが、延長や短縮されることも意外と多いようです。
帰任時期の目安があるだけでも準備しやすくなります。
Q. 現地での役職・仕事内容は?
赴任後に「聞いていた話と違った」とならないためにも、できるだけ具体的な業務内容をしっかり確認しておきましょう。
- 現地社員マネジメント
- 技術指導
- 立ち上げ、撤退
- 営業顧客対応
Q. 雇用形態は出向?転籍?
雇用形態によって、給与や福利厚生だけでなく、社会保険や帰任時の扱いも変わります。
- 出向
- 転籍
- 現地法人と直接契約
赴任後に認識違いが起きやすい部分です。後述する社会保険(厚生年金や健康保険)の取り扱いなどにも関わるので要注意です。
Q. 家族帯同はできる?
家族帯同の可否によって、住居や教育環境、生活費の考え方も変わります。
会社方針だけでなく、赴任国のビザ制度が影響することもあります。
Q. 家族はいつ帯同できる?
家族の帯同時期は、子どもの進学や配偶者の退職時期にも関わってきます。
- 赴任者本人と同じタイミング
- 赴任の数か月後に合流
- 配偶者の仕事や子供の進学のタイミング
赴任スケジュールとあわせて考えておきたいポイントです。
Q. 帰任後のポジションはどうなる?勤務地は変わる?
海外赴任は赴任中だけでなく、帰任後のキャリアにも影響します。
帰任後の働き方まで含めて考えると、赴任を受けるかどうかの判断材料になります。
この段階では、まず「赴任後の生活や働き方をイメージできる状態」を目指しましょう。
STEP2|海外赴任規程で確認したいこと
赴任を受ける前後は、海外赴任規程や人事から配布される資料を確認します。
ここで知りたいのは、
「会社がどんな制度を用意しているか」
です。
会社によって内容は大きく異なるため、まずは規程を読み、不明点を人事へ確認していきます。
手当・補助
Q. どんな手当がある?
- 海外赴任手当
- ハードシップ手当
- 家賃補助
- 家族帯同手当
- 単身赴任手当
- 語学補助
- 教育費補助
Q. 家族帯同する場合としない場合の手当は?
- 家族帯同手当
- 単身赴任手当

家族人数によって支給額が変わったり、住宅補助の条件が変わったりする場合があります!
Q. 語学補助はある?
- 語学学校費用補助
- オンライン英会話補助
- 資格取得支援
赴任前後いつからいつまで、補助額はいくらなのかチェックしておきましょう。
Q. 子どもの教育費補助はある?
日本人学校のみ対象か(インターナショナルスクールは含まれないことも)
ナーサリーや保育園の補助もあるか会社によって異なります。
住居
Q. 住宅は会社契約?個人契約?
物件はどうやって探して会社で契約するのか、個人で契約するのか。
Q. 家賃補助の上限は?
- 上限額あるのか、全額負担なのか
- 自己負担額はいくらか
- 光熱費は自己負担なのか
家族・福利厚生
Q. 一時帰国制度はある?
1~2年に1回対象となることが多いですが、本人・家族で回数が異なることもあるようです。
Q. 配偶者の就労は可能?別途ビザが必要?
- 家族ビザでは就労不可
- 就労ビザ取得が必要
国によって制度が異なるので事前に確認しましょう。
Q. 海外医療保険はある?
- 会社加入の海外医療保険
- キャッシュレス診療の有無
- 歯医者や不妊治療など対象か
STEP3|給与説明のときに確認したいこと
赴任条件や海外赴任規程の説明が終わると、給与や待遇の説明があります。
このタイミングで、
- 実際にいくら支給されるのか
- 税金はどうなるのか
- 社会保険はどうなるのか
を整理していきます。
特に税金と社会保険は、雇用形態や会社制度によって扱いが変わるため、給与の説明を受けるときに疑問点をできるだけ潰しておきたいところです。
給与
Q. 給与は日本払い?現地払い?
- 日本払いのみ
- 現地払いのみ
- 日本払いと現地払いの併用の場合はその割合は?
Q. 為替変動時の取り扱いは?
- 為替変動による調整なし
- 一定以上変動した場合に見直し
- 定期的に支給額を見直し
現地通貨払いがある場合、為替の動き方によって手取りが変わることがあります。どのタイミングで見直されるのかも合わせて聞いておくといいです。
Q. 海外赴任手当や危険手当はある?
等級や役職によって変動があることが多いです。
危険手当については治安状況に応じて支給される会社もあれば、一部地域のみ対象としている会社もあります。
「自分のケースではいくらになるのか」を具体的に確認しておきましょう。
税金
Q. 税金は会社がサポートしてくれる?
- 税務相談窓口あり
- 税理士サポートあり
- 会社が申告を代行
- 自分で手続き
海外赴任では日本側と赴任国側の両方で税務手続きが発生することがあります。
会社がどこまで対応してくれるかで、自分が動く範囲が変わります。
Q. 出国時の年末調整は?
出国時の給与支給のタイミングで会社が対応するケースがほとんどです。
ただし医療費控除など個別の事情がある場合は自分で確定申告が必要になるため、その点は事前に把握しておきましょう。
Q. 住民税の支払いどうなる?
- 引き続き給与控除
- 一括徴収
出国するタイミングによっては、渡航後もしばらく住民税の支払いが続くことがあります。
いつまで支払いが発生するのかを把握しておくと、慌てずに済みます。
社会保険・年金
Q. 日本の厚生年金・健康保険は継続される?
雇用形態が出向か転籍かで変わります。
どの雇用形態で厚生年金や健康保険がどうなるのか確認しておきましょう。
- 日本の社会保険を継続
- 現地制度へ加入
- 社会保障協定を利用
日本の厚生年金や健康保険から外れると、年金の未加入期間が生じたり、一時帰国中の医療費が全額自己負担になったりします。
また、社会保障協定のある国で一定期間働くと、将来その国でも年金を受け取れるケースもあります。
Q. 海外給与は将来受け取る年金に反映される?
現地通貨で支払われる給与部分が年金の算定対象になるかどうかは、会社制度や雇用形態によって異なります。
長期赴任になるほど影響が出やすいため、駐在期間が長い場合は特に押さえておきたい点です。
年金や住民票については複雑なため、別記事で詳しく解説しています。
STEP4|渡航準備で確認したいこと
給与や待遇の説明が終わると、いよいよ渡航準備が始まります。
この段階では、人事担当者だけでなく、ビザ代行会社や引越し業者とやり取りすることも増えてきます。
Q. 赴任までのスケジュールは?
- 辞令発令
- ビザ申請
- 健康診断
- 引越し
- 渡航
赴任時期によって進め方が大きく変わります。「何をいつまでにやるのか」を早い段階で一覧化しておくと、後から詰まりにくくなります。
Q. ビザ取得は誰が進める?
- 会社が代行会社へ依頼
- 人事主導で進行
- 本人が一部手続きを実施

海外赴任準備は人事もなかなか動いてくれないことも。
代行会社が入っているのであれば、スケジュールや書類関連は代行会社担当者に直接聞く方が早いです。
Q. 引越しはいつから始まる?
- 会社指定業者を利用
- 複数社の見積もり取得
- 渡航の1〜2か月前から準備
Q. 船便・航空便はどれくらい使える?
会社の海外赴任規程で決まりがあったり、業者のパッケージごとで異なったりすることがあります。
- 船便+航空便
- 重量制限あり
- 家族人数で上限が変わる
- 業者や赴任先によっては食材NGなところもあり
Q. 航空券や仮住まいは?
- 会社手配
- 旅行会社手配
- 本人手配
現地到着後すぐに自宅に入れないケースも多く、ホテルや仮住まい期間が発生することがあります。
到着直後の生活イメージを持っておくと、現地での立ち上がりがスムーズです。
Q. 日本の荷物(倉庫保管・実家保管)はどうする?
- 会社契約の倉庫を利用
- 自己負担で倉庫保管
- 実家へ預ける
- 自宅をそのまま維持する

自宅をそのまま維持する、または貸し出しするなら会社に制度がないか問い合わせしてみましょう。補助が出るケースもあります。
確認漏れ防止チェックリスト
海外赴任の準備は長期間にわたるため、「聞いたつもりだった」「確認したと思っていた」ということも少なくありません。
最後に、会社や人事へ確認しておきたい項目をチェックリスト形式でまとめました。
STEP1|赴任条件
- 駐在先(国・都市・エリア)
- 赴任時期
- 駐在期間
- 現地での役職・仕事内容
- 雇用形態(出向・転籍など)
- 家族帯同の可否・時期
- 帰任後のポジション・勤務地
STEP2|海外赴任規程・制度
- 海外赴任手当
- 家賃補助
- 家族帯同手当
- 単身赴任手当
- 語学補助
- 教育費補助
- 住宅契約方法(会社契約・個人契約)
- 一時帰国制度
- 配偶者の就労可否
- 海外医療保険
- ボーナス・退職金への影響
STEP3|給与・税金・社会保険
- 日本給与と現地給与の割合
- 為替変動時の取り扱い
- 海外赴任手当の計算方法
- 危険手当の有無
- 税務サポートの有無
- 出国時の年末調整
- 住民税の支払い方法
- 厚生年金・健康保険の取り扱い
- 海外給与の年金反映有無
STEP4|渡航準備
- 赴任までのスケジュール
- ビザ取得の流れ
- 健康診断・必要書類
- 引越しスケジュール
- 船便・航空便の上限
- 航空券手配方法
- 仮住まいの有無
- 日本側の荷物保管方法
- 現地到着後の住居手配
まとめ
海外赴任では、
- 赴任条件
- 海外赴任規程
- 給与・税金・社会保険
- 渡航準備
の順番で整理していくと、全体像が見えやすくなります。
特に重要なのは、最初から人事へ質問攻めにするのではなく、まず就業規則や海外赴任規程に目を通しておくことです。
規程を読むことで会社の基本ルールが分かり、人事へ確認すべき内容も整理しやすくなります。
そのうえで、
- 自分のケースではどうなるのか
- 規程に書かれていない部分はどうか
- 実際の運用はどうなっているのか
を人事や代行会社へ確認していけば十分です。
海外赴任は準備することが多く不安もありますが、事前に全体像を把握しておくだけでも動きやすさは大きく変わります。
まずは就業規則や海外赴任規程を開き、この記事のチェックリストと照らし合わせながら確認を進めてみてください。

